all streets shibuya

A local guide made by walking

渋谷を見つめる             建築的なまなざし

Vol.22 元木 大輔(建築家)

2026.04.03

 楽しい街に欠かせないもの。個性的な飲食店やショップ、自然の気配などさまざま挙げられますが、考え抜かれた建築も必要でしょう。建築を楽しむ街歩きは、なにも京都のように伝統的な景観が残る土地でしかできないわけではありません。渋谷でも、いや、新たなモノやコトが生まれつづける渋谷だからこそ、建築的なのまなざしをもつことで街がいっそう奥深い姿を見せるのです。  今回のゲストは、ここ「all day place shibuya」のインテリアデザインを担当した、建築家の元木大輔さん。主宰するDDAAが手がけた空間や、お気に入りのスポットについて、街を歩きながら語ってもらいました。

同時代性をもつ作り手と                         循環する空間づくり

 恵比寿駅から東へ歩き、喧騒も落ち着いたころ、透明な黄色のカーテンが視界に飛び込んできました。スロープを下った半地下の空間には、レザーのシューズが陳列されたショップがあり、奥には工房が控えています。 「Hender Schemeによる『circulation』です。循環をテーマにリペアやリセール、カスタムを行っています。彼らは同時代性を感じられる作り手。付き合いが深く、他店舗や事務所も設計させてもらっていますが、いつも不思議な物件を見つけてくるんですよ。ここも元々は駐車場。循環を掲げる空間なので、改修工事も最小限に設計しています。半地下なので湿度や浸水の対策ばかり悩んでいましたよ(笑)」

音楽少年を惹きつけた                         レコードとクラブの街

 そう笑ったのは、建築・デザイン事務所DDAAを主宰する元木大輔さんです。東京をはじめ各地で話題の空間をいくつも手がける建築家にとって、渋谷の原体験は高校時代にあるそう。毎月、アルバイトの給料日が訪れるたびに、熊谷の実家から電車に揺られて、はるばる渋谷まで足を運んでいたそうです。レコードをお目当てに。 「シスコ坂ってわかりますか? 渋谷センター街の先、宇田川町のあたり。同名の輸入レコード店がかつてあって、当時は世界でいちばんレコードが売られるエリアだったそうです。僕は3歳からずっとバイオリンをやっていたのですが、高校生のころからレコードを買い漁るようになったんです。当時の渋谷は、エリアごとに全然違う雰囲気でした。宇田川町、渋谷PARCO、東急百貨店本店、公園通り……原宿なんて行ったら、完全に別世界でしたよ。それが街のおもしろさであり、刺激的だったように思います」

空間の中と外をつなぐ                         街のパブリックスペース

「当時、無断で原宿の路上でフリマをやる人たちがいましたよね。Tシャツを転売したり、アクセサリーを自作したり。勝手な行為だったでしょうが、街が開かれているかのようで、活気があってよかったと思います」  街に開かれた空間。ここ「all day place shibuya」の客室や共用部のデザインでも、ホテルの中と外を積極的につなげる、渋谷のパブリックスペースが目指されました。 「パブという言葉もパブリックハウスから来ているんですよね。1階のビールやコーヒーの雰囲気が敷地外にはみ出ていくよう、エントランスを開放的な空間にし、レセプションは2階に配置しました。ホテルのサインや、スロープの手すりにもドリンクが置けるようになっています」

膨大な好奇心が生む                         領域横断的な建築

「アイデアの出し方? 日頃から気になったものをストックしています。本、映画、展覧会……年ごとにフォルダをひとつ作成し、一年で2000個ほど溜まります。なにがおもしろいと感じるのかを要素に分解して考えることで、これが 2000個分のアイデアの素になるんです」  のんべい横丁の一角、1.5坪の極小バー「はな」では店舗に構造体を挿入。テーブルとしても可変的に利用できるスライド式の階段天板など、スケールに合わせた工夫が込められています。外装に大型LEDビジョンを配した「COLUMBIA TOKYO FLAGSHIP」では、映像に自然風景も流すようディレクション。東急プラザ表参道「オモカド」の「LOCUL」では、商業空間とオフィス空間をグラデー ションでつなぐようにインテリアを手がけました。  街歩きの最後には、「TOKYO BURNSIDE」へ。インスピレーションを求めて……と考えてしまうのは早計でした。 「いつも違うものが食べられるからです(笑)。初めて知ることばかりの状態に身を置いていたいんですよね。好奇心次第でなんでもできるのが、建築の楽しいところですから」

all day place shibuyaの1Fの手すりは、 ドリンクを置ける幅に設計した

List

1
circulation
渋谷区恵比寿2-14-3 森島ビルB1

人気レザーブランドによる、「循環」をテーマ にした実店舗。リペア、カスタム、リセールなどを展開する。

2
all day place shibuya
渋谷区渋谷1-17-1

元木さんはインテリアデザインを担当。街のパ ブリックスペースを目指し、客室や共用部をデ ザインした。

3
はな
渋谷区渋谷1-25-9 渋谷のんべい横丁内 中通り

ニッチフレグランス専門店のNOSE SHOPに よる極小バー。予約制の屋根裏では、香水に 着想を得た季節ごとのコースを提供。

4
COLUMBIA TOKYO FLAGSHIP
渋谷区神宮前6-27-8 エムズ原宿1・2F

2025年6月に開店した旗艦店。外装が大型 LEDビジョンに彩られ、店内も随所に自然素材があしらわれる。

5
LOCUL
渋谷区神宮前4-30-3東急プラザ表参道原宿5F

商業施設のフロアが新しい商店街に変貌。多彩なショップ、ポップアップ、ワークスペースが境目なく緩くつながる。

6
TOKYO BURNSIDE
渋谷区神宮前5-12-14 2F

ノルウェーの建築・デザイン事務所が手がけ るカルチャースポット。昼はカフェレストラ ン、夜はバーラウンジに。

Profile

元木大輔 Daisuke Motogi

1981年生まれ。埼玉県出身。建築家。武蔵野美術大学造形学部建築学科を卒業後、スキーマ建築計画を経て、2010年にDDAAを設立。建築、都市計画、ランドスケープ、インテリア、プロダクト、コンセプトメイキングなど活動分野は多岐に渡る。建築的な思考を軸に、社会性のある実験的なデザインとリサーチを行うDDAA LABも主宰。記事内のスポットのほか、多くの設計を渋谷区内で手がけている。

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