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A local guide made by walking

フットボールを
渋谷の日常のエンタメに

Vol.07 小泉 翔
(PLAYNEW代表取締役社長)

2022.11.10

「Football for good 〜ワクワクし続ける渋谷をフットボールで〜」というビジョンを掲げ、Jリーグ参入を目指すクラブチームがあることをご存知ですか? その名も「SHIBUYA CITY FC」。2019年の設立ながら、東京都社会人サッカーリーグの4部から1部まで無敗で駆け上がり、東急やカシオ計算機といった大手企業がオフィシャルパートナーとなっている注目の存在です。クラブを運営するPLAYNEW代表の小泉翔さんは、「渋谷でなかったらフットボールの事業はやっていなかったでしょう」と言ってはばかりません。なぜ渋谷でフットボールなのか?渋谷と関わって10年の彼に、お馴染みのコースを案内してもらいました。

渋谷で遊ぶ大学生から
渋谷で働く経営者へ

「大学3、4年からず〜っと渋谷にいますね。飲むのも、遊ぶのも、そして働くのも」
 三軒茶屋と恵比寿のシェアハウスに始まり、渋谷では大手IT企業とベンチャー企業、そして自身が立ち上げたサッカークラブの運営会社。小泉翔さんのこの10年は、東京でもひと際カオスな街とともにありました。
「渋谷って『出る杭は打たれる』という風潮がまったくありませんよね。新しいものがどんどんここから生まれるし、みんなが好きなことをしている。渋谷からJリーグを目指すなんてデカいことを言っていられるのも、この街の自由な雰囲気に背中を押されているのかもしれません」

東京のど真ん中にある
Jリーグクラブを目指して

「プロスポーツで唯一、プロ参入の道がアマチュアに開けているのがフットボールなんですよ。社会人野球チームを作ったところで、どれだけがんばってもNPBには基本的に加盟できないでしょう。でもフットボールなら、J1を頂点にしたピラミッドが11カテゴリあり、ひとつずつ勝ち上がることでいつか昇格できるかもしれない。いまはまだJ7相当ですが、可能性があるってだけでワクワクしませんか?」
 そう白い歯をこぼす小泉さん自身、前身の「TOKYO CITY FC」では中心プレーヤーでした。2014年に結成し、Jリーグ参入を目指そうと決意した2019年、「SHIBUYA CITY FC」への改称とともに経営者に転身。一見するとスケールダウンのような改称もまた、クラブの解像度を高めるための一手だったと言います。
「パリ、マドリード、ミュンヘン……世界的に有名なクラブって、そもそも街が有名じゃないですか。それなのに東京23区にはJリーグクラブがひとつもありません。文化があり、観光客が来る、デカい街。この掛け合わせが重要なので、現状の空洞はめちゃくちゃもったいないと思っています」

渋谷拠点の企業に
挑戦を後押しされて

 先進国では特殊という状況を打破すべく、2022年からは元日本代表の戸田和幸さんをテクニカルダイレクター兼コーチに招聘しました。「渋谷区スポーツセンター」で練習し、「明治神宮」で勝利祈願。クラブは渋谷に密着しながら活動の裾野を広げています。
「戸田さんというトップレベルを知る人が加わって、チームのレベルがグッと上がりました。東急や伊藤園、明治安田生命がスポンサーになってくださり、9月からはG-SHOCKのカシオ計算機もクラブパートナーに。めちゃくちゃウマい焼肉店の『永秀』もスポンサーなんです。まだ下層のカテゴリのクラブに、これだけたくさんのスポンサーがついてくださるのも、渋谷にJリーグクラブをというデカい目標に、きっと共感してくださっているからだと思います」

街全体をスタジアムに見立てる
都市型フットボールクラブ

「それだけたくさんの人が価値観を共有できるのも、フットボールの醍醐味でしょうね」
 小泉さんはそう言葉を続けました。そしてもうひとつ、Jリーグとは別に目標とする街の風景があると言います。
「僕らはサポーターを増やすというより、365日、街のコンテンツにサッカーがある渋谷を目指したいと思っています。『渋谷区立宮下公園 サンドコート』でビーチサッカーをしたり、『TORQUE SPICE & HERB TABLE & COURT』でフットサルをしたり、路上にリフティングのパフォーマーがいたり。街自体をスタジアムに見立て、ファッションや音楽といった他のエンタメと掛け合わせ、あちらこちらにサッカーが根付いている風景が目標ですね。若い世代にサッカー文化をバトンタッチするという意味でも、渋谷はぴったりなホームタウンですから。オフィスで夜まで働いて『渋谷駅東口歩道橋』に上がると、デカい企業のオフィスがいっそう高く、まぶしく見えるんですよ……フットボールの可能性、街の期待を感じているので、目標に向かって僕らはやれること全部をがんばるだけって感じですね」

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Profile

小泉 翔Sho Koizumi
1989年生まれ。埼玉県出身。PLAYNEW代表取締役社長。物心がついたころからボールを蹴りはじめ、大宮アルディージャU-18に所属。立教大学在学中のアメリカ交換留学を転機に、世界一周の旅を敢行し、帰国後に「TABIPPO」を設立。卒業後はサイバーエージェントに就職し、TABIPPO法人化とともに取締役に就任。2019年に退任後、自身が設立して改称を経た「SHIBUYA CITY FC」の運営に専念。現在は渋谷区円山町にオフィスを構える。