all streets shibuya

A local guide made by walking

スケッチに描かれる
渋谷の色彩

Vol.21 アイザワディーン(イラストレーター、水彩画家)

2025.11.05

アイザワディーンさんは東京生まれのイラストレーターであり、水彩画家です。トラベル・スタイル誌『PAPERSKY』をはじめ旅、アウトドア、カルチャーなどの分野の媒体で風景画を手がけ、その静謐な作品で注目を集めています。高校までをインターナショナルスクールですごしたディーンさんにとって、渋谷といえば同級生との溜まり場だそう。アメリカの大学に進学後も、帰国して都内で遊ぶとなれば渋谷。最初の就職先であるデザイン・ブランディング会社があったのも渋谷。どれだけ時間をすごしても、刺激が絶えることはないという街を案内してもらいましょう。もちろん、バックパックにはスケッチ道具を詰め込んで。

瞑想的かつ純粋な
スケッチという行為

「水彩画は風景を色で捉えるもの。建物を細やかに見るわけではないから、渋谷は描きやすい街といえるかな」  愛用の水彩画セットをバックパックから取り出すと、ものの15分でスケッチを描き上げたアイザワディーンさん。「渋谷ヒカリエ 無料展望スペーススカイロビー」は渋谷が見渡せ、作業に適したカウンターもあり、絵を描くには穴場。渋谷ならではのカラフルな広告看板の数々が、風景画を描くうえでのヒントになると話します。 「いつ来ても渋谷は情報量がハンパない。それに刺激を受けつつ、スケッチに取り組むことで、思考がクリアになる気がするんだよね。これってなんというか.....まるで瞑想みたいでしょ?純粋だからね、スケッチは」

渋谷は大都会なのに
村でもある

ディーンさんはインターナショナルスクールに通っていたため、同級生の多くが六本木や麻布に住んでいたそう。彼らに会うとなれば、集合場所はアクセスに便利な渋谷。スカイロビーを見つけたのも、ビルを探索しようとくまなく歩いたことがきっかけだったようです。 「こうやって高層階から地上に降りて、奥渋谷に向かって歩いているだけでも、雰囲気がどんどん変わっていく。渋谷ってデカい街だけど、小さい村がたくさん集まっているようなもの。こんな街は海外にもないし、おもしろいよね」  神山商店街に入れば、そこはディーンさんにとって思い出深いエリア。サンフランシスコの美術大学を卒業して帰国後、富ヶ谷にあったデザイン・ブランディング会社で働き、仕事に追われる毎日をすごしたと振り返ります。

会社員時代を支えた
職人仕込みのサンドイッチ

「あの2年間は大変だった.....宇田川緑道なんてよく歩いたな。息抜きというか、サボりというか(笑)。『CAMELBACKsandwich&espresso』へ通うようになったのもそのころ。 いつも注文するのは自家製ラムベーコンのサンドか、玉子サンド。ドリンクはスモールラテかな」  オーナーの成瀬隼人さんは、なんと元寿司職人。サンドイッチは注文を受けてから一点ずつ手作りするこだわりようです。いつしか常連客となっていたディーンさんのことを、「思慮深いというか、物事を静かに見ていて、僕らが来てほしいと願うお客様のタイプのひとり」と評しました。 「ありがたいな.....ここで雑談しながら、よくボールペンでスケッチをしていたからかな。タフな毎日だったし、ここですごすひと時が大切な時間だったような気がする」

ランニングは
息抜きであり瞑想

いまやイラストレーターとして雑誌や広告などで活躍し、友人が営む「Reel Atelier Shop Gallery TOR」で毎月行う水彩ドローイング・ワークショップでも人気を集めるディーンさん。机に向かってばかりの日々が続くなかで、息抜きになっているのがランニングです。 「山手通り沿いを走ることが多いかな。3日に1回は走るようにしていて、毎回5~10kmくらい。心身のメンテナンスになるし、ランニングも瞑想と重なるものがあると思う。あとは国立代々木競技場のコートでのフットサル。身体を動かすことが単純に好きなのもあるけど、それによってクリエイティビティが喚起されるような気がするのも、欠かせないポイントだね」  毎月のように登山をし、自然風景を描くことが多いものの、大事なのは都市と自然のバランスだと語ります。緑あふれる街中で身体を動かし、〆に向かったのは「BEER BRAINHarajuku」。月に数日、店頭でクラフトビールを注いでいるようです。高層ビル、商店街、実力店..・・これらもまた、渋谷だからこそ調和したバランスなのかもしれませんね。

モレスキンのノートに描かれた渋谷のスケッチ。
最小限の道具は登山のUL装備のよう。

List

1
渋谷ヒカリエ 無料展望スペース スカイロビー
渋谷区渋谷2-21渋谷ヒカリエ1F

入場無料の絶景スポット。渋谷スクランブル交差点やMIYASHITAPARKなど、渋谷のランドマークの眺望が抜群の穴場的な場所。

2
CAMELBACK sandwich&espresso
渋谷区神山町42-2

名物「すしやの玉子サンド」は売切必至。確実に食べるなら午前中に訪問したい。落ち着いてすごすには夕方が狙い目。 @camelback_tokyo

3
Reel Atelier Shop Gallery TOR
渋谷区代々木4-41-14ハイツ参宮橋B102

レザーブランドによるアトリエ兼ショップ。財布やケースなどが充実し、作家の展示もしばしば開催する。不定休。@reel_tor

4
山手通り

ディーンさんのお気に入りのランニングスポット。山手通りを北へ南へ、あるいは井の頭通りを西へ東へと走ることが多いという。

5
国立代々木競技場フットサルコート
渋谷区神南2-1-1

人工芝4面の屋外フットサルコート。ナイター設備も完備。ディーンさんの高校時代のポジションはサイドバックだったそう。

6
BEER BRAIN Harajuku
渋谷区神宮前2-18-19

千葉県柏市で醸造を行うクラフトビールプランドによるビアスタンド。常時5種類がタップに並び、缶も販売。神宮前に旗艦店がある。@beerbrain_harajuku

Profile

アイザワ ディーン Dean Aizawa

1993年生まれ。東京都三鷹市出身。イラストレーター、水彩画家。 サンフランシスコ・アカデミー・オブ・アート大学ファイン・アート・ペインティング科卒業。非営利アウトドアコミュニティ「opencountry」のコミュニティオーガナイザーも務める。講師役として渋谷で毎月開催している水彩ドローイング・ワークショップについてはInstagramから詳細を確認できる。@deanaizawa

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