2019.07.08

祇園祭の音をカンラでも

京仏具が支える、コンチキチンの音

 

 

京都では毎年7月1日から祇園祭が行われます。 前祭(さきまつり)、後祭(あとまつり)での山鉾巡行だけでなく、1ヶ月間行われる祭事は見どころがたくさんあります。 その中でも印象的なのが、祇園囃子によって山鉾の上で演奏されるコンチキチンと流れる音楽。この祇園囃子は、鉦(かね)・太鼓・笛で成り立っています。 今回コンシェルジュは、国内でも数少ない「鉦」を制作されている京都の工房へ見学に行って参りました。

 

 

 

京都府宇治市にある南條工房は、創業180年余りの歴史に培われた伝統と知恵をもとに、佐波理(さはり)製のおりんを中心に鳴物を専門に制作されている工房で、祇園祭に使用される鉦も制作されています。 工房に1歩入るとサウナのような猛烈な暑さ。南條さんを含む4人の職人さんにより鋳造作業が行われていました。錫と銅をまぜて佐波理(さはり)と言われる青銅を約1300度まで熱して作り、同時に土から手作りされた鋳型を窯で焼き、そしてタイミングよく冷ました鋳型に佐波理を流し込みます。鋳型から外し、再度熱し、そこから音色と形を整えるための削る作業を行います。最後に焼入れをして音色を確かめ、仕上げの磨く作業をします。

 

 

 

「すーっ」と続く南條さんのおりんの音色は、量産的でない、南條工房でしか作れない音色です。 鋳型の出来具合や鋳造、削る工程によって音色は変化し、制作にあたる「正解」はないそう。 「いかに工程の中でマイナスになる部分を省くことができるか」を常に意識されています。

 

 

月2-3回行われる鋳造作業の日は、決まってオロナミンC。スタッフも一緒に頂きました。

 

 

南條和哉氏(上写真)は次期7代目。元々、京都で料理人をされていました。奥様の家業である鳴物神仏具製造を行う南條工房に見学に初めて行かれた際、初めて目にするおりん作りの現場での「すごさ」、「今まで聞いていたおりんとは違う音色」にひきこまれたそうです。 仏具業界に入って17年。 いろいろな職人さんと出会うことで、 仏具作りではなく、「音色を作る」仕事と思うように。 「音色」を選んで、楽しんでほしい、おりんの音色を身近な日常に感じてほしい、という想いに変化されました。最近では、もっと身近に佐波理おりんを楽しんでほしいという想いからLinNeというブランドを立ち上げ、新しいかたちの小型のおりんを制作されています。

 

 

2015年、150年ぶりに山鉾巡行を復活させた大船鉾。五代目・一雄氏が展示室に飾られていた鉦に先祖の銘が彫られているのを発見し、使命感のもと、鉦の制作・寄付をしたことは大船鉾復興のきっかけとなりました。大船鉾の他、近年では、長刀鉾、函谷鉾、北観音山、南観音山の鉦を制作されています。 祇園祭には毎年行く機会があるそうで、自分が制作した鉦は音色を聞けばわかるとか。叩けば叩くほど柔らかく、味のある音色を出す鉦になっていくそうです。 おりんを選ぶのではなく、「音色」を選ぶという新たな発想にどきっとしました。仏具という少し堅苦しいくくりではなく、「音色」を感じる、選ぶという視点でおりんを日常の中で感じられる空間を作っていくことを今後の目標とされています。

 

 

今回、南條さんより「鉦」をお借りし、7月の期間限定で1Fにて実際に鳴らしていただくことができるようになりました。鉦の音色を通して、祇園祭の伝統をゲストに感じて頂けたら幸いです。