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宮古島らしい「地ビール」作りに情熱を注ぐ。
小さなブルワリーのおはなし
きっかけは、ビールと宮古島が大好きな正規さんが「いつか宮古島でブルワリーを作りたい」と考えていたから、と一文でまとめるには少々勿体ない。ビール作りに情熱を注いだ、大きな物語があるのだ。
「宮古島に移住したら、どんな仕事をしようかと考えていました。そのとき趣味でビール作りにハマり、そのまま仕事にしようと。そんな時に埼玉県の小川町で地ビールを作っている人を新聞記事で知り、ブルワリーに通うようになりました。仕込み方などを教わっている矢先、今度は近くの醸造所を閉めたいという人を紹介してもらい、醸造に必要な設備を中古で譲り受けることができたんです」
まさに運命の巡り合わせだ。しかし、トントン拍子に物事が進んだわけではない。
「タイミングは良かったのですが、酒造免許を取るのに時間がかかりました。税務署だと販売先や醸造所の場所が決まるまではほぼ門前払いで、1年はまともに話を聞いてくれませんでした。もろもろ決まり始めてからようやく書類審査に進めたという感じでした」
「大きな設備も島の建設業者の知り合いの倉庫に置かせてもらっていました。いろんな人の助けがあってこのブルワリーが完成しました」
「今は7種類のビールを出しています。エールビールが最初、その次にダークやヴァイツェンを作りました。この3種類をベースに、フルーツビールを作っています。多良間島の黒糖やパッションフルーツは宮古島のものを使っていますよ」
「エールビールには特別こだわっています。理由としては、宮古島の地下水がエールビールの生まれたイギリスと同じ硬水ということ。ビールを発酵させたあとに、もう一回ホップを入れて香りづけする『ドライホップ』というイギリス伝統の工程も行っていて、これにより香り高いスッキリとしたビールが出来上がります」
「the rescapeのディナーはコース料理がメインなので、前半にエール、メインディッシュに合わせて後半はダークを提案します。その際に『とてもおいしいね』と言ってもらえることが多いです。宮古島唯一のクラフトビールというのも売りになっています。個人的にはオリオンビールに負けない個性があると考えています」
インタビューの合間も牧山と好きなビールについて楽しそうに語らう正規さん。お気に入りはこれまたイギリスの定番ビール「バスペールエール」だとか。
「開業当初から常にビールのおいしさについて探求しています。というのも、宮古島の硬水はpH値が高いため、ホップの香りを強く出そうとすると苦みが強くなってしまうことがあります。ホップとの相性やバランスが重要なので、さまざまなホップのデータを見ながら定期的に組み替えて、よりおいしいビールになるよう試行錯誤しています」
「クラフトビールと最近は言われていますが、私はあえて『地ビール』という呼び方にこだわっています。あくまで個人的なこだわりなのですが、クラフトは作っている、地ビールは地元に根付いている、というイメージです。このビールから宮古島のことに繋がるきっかけになればいいなと」
宮古島の顔となる「地ビール」へ。小さなブルワリーのおはなしは続く。