all streets shibuya

A local guide made by walking

陸上競技選手が走る
世界へ続く渋谷の道

Vol.11 館澤 亨次
(陸上競技選手)

2023.03.21

カルチャーの発信地であり、流行の最先端。そんな渋谷の街は、アスリートの瞳にどう映っているのでしょうか。陸上競技中・長距離で活躍し、日本選手権の1500mを制すること3回。東海大学時代には箱根駅伝で同校初の総合優勝に輝き、現在に至るまで名前を残す6区区間記録保持者。オリンピックや世界選手権を見据える館澤亨次選手とともに、渋谷区をゆっくりと走ってみましょう。勝利祈願にお気に入りのウェアが揃うショップ、最先端のトレーニング施設、束の間のご褒美グルメ、そしてジョギングにぴったりなスポット。渋谷区に拠点を構えるDeNAに所属するアスリートが走る道は、世界の大舞台へと続いているかもしれません。

五輪橋から始まる
渋谷ジョギング

「2024年のパリオリンピック、2025年に東京で開催される世界選手権。ふたつの大会で1500mを走ることは陸上競技人生の集大成になるでしょうし、出場権を勝ち取るために今年が大事な1年なんです」
 決意の言葉とともに、DeNAアスレティックスエリートの館澤亨次選手が跳ねるような足捌きでジョギングをスタートしました。代々木公園原宿門を出発し、線路の上に架けられたその名も五輪橋を渡って、原宿方面へ。
「DeNA本社だけでなく、信頼している治療院もあるので、渋谷には定期的に来ています。スピードを出して走れる街ではありませんが、リフレッシュにはぴったりですよね」

竹下通り近くで必勝祈願と
低酸素トレーニング

「まず訪れたかったのが『東郷神社』です。僕はルーティンをたくさん取り入れるタイプですが、願掛けをしたり、お守りを持ち歩いたりというのはあまりしません。でも、ここは必勝祈願の御利益があると有名なので、勝負の年として参拝したいと思っていました。『金勝御籤』っていうのがあるのでやってみてみてもいいですか? 緊張するな……うわ、大吉だ! よっしゃー! 『競争相手が出てきますので、何事にも機先を制して動くこと』と書かれていますが、レースの予言でしょうか(笑)」
 竹下通りの近くには閑静な神社に加えて、最先端のトレーニング施設である「RUNNING SCIENCE LAB」があります。酸素濃度を高地環境のように調整して行う低酸素トレーニングは効果がてきめんなんだとか。
「低酸素トレーニングができる施設は都内でもめずらしいので、多い時期だと週に1回、1時間かけて走り込みます。最新シューズが試し履きできるのもありがたく、いまレースで使用しているシューズも、ここで走り心地をテストしてから導入を決めました」

トップランナーを支える
衣類と食

「明治通りに出れば、ユニフォームのサプライヤーの実店舗である『Goldwin Harajuku』があります。僕は走ると胸郭が拡がるので、収縮に対応できる着心地が重要。ユニフォームでタイムが変わると感じたのはGoldwinが初めてです」
 DeNAのある渋谷駅周辺を経て奥渋谷まで進めば、代々木八幡の治療院に長年通う館澤選手におなじみのエリアです。
「普段は節制しつつ、たまに自分へのご褒美を設けるようにしています。そんなときに来るのが『418KAMIYAMA』。僕はハンバーガーが大好きで、海外遠征の食事でもいちばんの楽しみにしているくらい。ここはアメリカのような味わいで、アボカドチーズバーガーは全体のバランスが絶妙!」

世界を見据えて
走る日々

「『織田フィールド』の近くまで走ると、ここで練習した日々を思い出します。ランナーが集う聖地のような場所。『代々木公園』に戻ってきて、中央広場を時計回りするように走ったら、原宿門でゴール。全部で5kmくらいのコースになりましたかね。最後に緑豊かな公園を気持ちよく走って終えられるのがポイントです」
 毎日のように20km以上を走るという館澤選手は息ひとつ乱さず、終始穏やかな表情をしていました。それでもレースとなれば、気持ちのこもった走りが魅力のトップランナー。最後に、今後の目標について教えてもらいました。
「長距離よりも走る距離が短くて済むと思って取り組み始めた1500mですが、長距離の駆け引きと短距離のスピード感のいいとこ取りのような奥深い競技なんですよ。自己ベスト(3分38秒35)と日本記録の差は3秒足らず。まずは日本記録を更新して、オリンピックや世界選手権の切符をつかみたいと思っています。そうして『日本の1500mといえば館澤』、『1500mはおもしろい』と思ってもらえるようになれば、競技者冥利に尽きますね」

List

Profile

館澤 亨次Ryoji Tatezawa
1997年生まれ。神奈川県出身。陸上競技選手。横浜市の陸上クラブから選手としてのキャリアをスタートし、埼玉栄高校時代に全国高校駅伝で力走。東海大学進学後、箱根駅伝では3年次に4区2位の好走で創部初の総合優勝に貢献。4年次には6区で区間新記録を樹立し、現在も区間記録保持者として名を刻む。全日本大学駅伝でも区間賞を3年連続で獲得した。在学中から1500mで頭角を現し、2017年と2018年に日本選手権を連覇。2020年にも3度目の日本一を飾った。渋谷区に拠点を構えるDeNAが運営するDeNAアスレティックスエリートに2021年から所属する。